大判例

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最高裁判所第二小法廷 平成8年(行ツ)215号 判決

東京都豊島区池袋三丁目八番一三号

上告人

乘金俊

同所

上告人

乘金弘子

東京都豊島区西池袋三丁目三三番二二号

被上告人

豊島税務署長 藤井康夫

右指定代理人

大竹聖一

右当事者間の東京高等裁判所平成七年(行コ)第六〇号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成八年六月二六日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係の下においては、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一)

(平成八年(行ツ)第二一五号 上告人 乘金俊外一名)

上告人らの上告理由

一、はじめに

右上告人両名は、一審判決に接し、一読難解、二読誤解、三読不可解と三歎したが、二審判決では一読不可解、二読も三読も不可解、「これでも裁判か」と忿懣やる方ない気持ちとなった。

上告審では次の両氏のご意見の如く公明正大わかり易い審理判決を臨む次第です。

(一) 昭和二二年八月四日、最高裁判所はめでたく誕生した。初代長官の三淵忠彦氏は就任に際し、「国民諸君への挨拶」の中で「裁判所は国民の裁判所」でなければならぬと強調された。(上告人俊は同年春京大法学部に入学同窓の先輩言葉として印象深い)。本年八月四日はその五〇年の誕生日に当る。三好達第一三代長官の下で成大な祝賀会も催されたことと思うが、初心に立返り国民のために開かれた、わかり易い信頼性と尊敬を高める様な裁判制度の改革を実施してほしい。

(二) 東大教授の伊藤眞氏はその著書民事訴訟法Ⅰ(有斐閣一九九五)第一章民事訴訟法への招待の書出しで次の如き注目すべき見解を述べられているので引用する。

『人はなぜ争い、争いはなぜ裁判所に持ち込まれるのだろうか。裁判所に持ち込まれる争いは、本当に解決されるのでろうか。裁判官、弁護士たち法律家は誰のために何のために存在するのだろうか。争いの当事者達は法律家による法を基準とした解決に満足しているのだろうか。もし満足しているとしたら、逆に満足していないとしたら、それはいかなる理由によるものだろうか。(注1参照)

裁判所における紛争解決の手段を規律する民事訴訟法の解釈運用を考える場合には、これらの問いを念頭におく必要がある。』

注1『満足しない訴訟嫌い』の理由として、小林秀之・竜嵜喜助両先生は次の点を挙げてられている。

その理由は時間・使用のかかることが挙げられるのが一般的であるが、そのほかに「重苦しい雰囲気「わかりにくい判決文」に象徴される裁判のわかりにくさが指摘される

右を念頭におきながら次に進む

(三) 説明の方法と順序

まず後記五「附属書類の表示」については、その量が多いので目録のみ記載し「上告理由」部分と対比参照し易いように内容は別紙にまとめて記載した。

次に該当項目の説明用として→六法全書判例基本六法判例事典、行政判例集、民事訴訟法判例百選ⅠⅡ、商法事典金融証券事典所得税質疑応答集や憲法行政法、民訴法、税法当の教科書、参考書をもとに具体的に法令名の記載のある学説判例を出来丈けセットにしたものを採用した。その頁数は一→二六までです。(附〇〇頁)と記載し比較し易くした。

更に二審判決の一審判決に付加強調された部分を夫々次の〈A〉〈B〉〈C〉の符号を付して爾後の説明参考の便を図った。

それは

〈A〉(五~六頁)上告人俊の株式売買回数と株式注文伝票

〈B〉(六~七頁)〃弘子の〃と四枚の〃

〈C〉(七~八頁)上告人両名の事業(所得)否定の理由付

に関する部分である。

なお、この三部分は二審判決の「証拠理由の説示」に相当する部分である。これは〈B〉に含まれる「通常共同訴訟独立の原則」と〈C〉に含まれる「物的施設(営業所)がなくても事業(所得)と認める」とする最高裁判例と何れも異なる判断を示すものである。

又そこには法令の解釈適用の誤りあり、訴訟手続の違背あり、絶対的上告理由ありで、まるで上告理由の総てを包含する。云わば上告理由の見本市か宝庫の様に思える部分である。

それでは出来る丈け〈A〉〈B〉〈C〉部分をクローズアップさせながら民訴規則四六条ないし四九条の定めるところに従って、具体的に出来る丈けわかり易く上告理由を記載致します。

追って、上告人両名の法律的主張について今回で足りないものは「補充書」を提出して補います。

なお、最後に「附記」として「本件の背景的事情及び問題点」を加えさせていただきます。

それでは民訴規則四六条ないし四九条の定めるところに従って、具体的に出来る丈けわかり易く記載致します。

二、規則四六条、民訴法三九条関係分

1.憲法その他の法令及びこれに違背する事由(適用せず又は不当に適用した)並びにその法令の条項又は内容(成文法以外のものについてはその趣旨)について夫々具体的に掲記致します。

右に基づき判決主文に影響ある憲法及び法令違背を次の通り記載します。なお前後の参照を容易にするため〈1〉〈2〉〈3〉・・・と通し番号を用います。

まず憲法八四条に規定する租税法律主義の精神に違背するもの三例(附一頁)

〈1〉右主義は税法の目的が納税者のマグナカルタであるべき点と相俟って「疑わしきは納税者の利益のために」と云う法理が強調される。

これに該当する違反は本件全体に及ぶものである。次に〈B〉である。

上告人弘子の昭和六二年一〇月一四日 二〇日 二一日 二三日の四枚の株式注文伝票四枚だけで六二年分を五九回と推認している。この四日間の間の一〇月一九日に有名なブラックマンデーが発生している。この異常事態発生時と他の時のものを単純に比較するのは誤りである。NTT株の購入とブラックマンデーの影響で弘子は六二年一二月末で二〇〇〇万円の評価損を計上しているのである。これは本件で追及されている倍の数字である。

更に上告人俊分を引合いに出して推認を断定的なものとしているがこれは

〈3〉共同訴訟人独立の原則の最高裁判決にも反し認められない誤りである(附二頁)

〈2〉右主義のうち税務通達類の法源性の否定の法理がある(附一頁)

これについては附属書類サ甲第七六号証〈2〉を参照(附一頁)

これに該当する違反が〈C〉の上告人両名の事業(所得)に関するものであり、後述二一頁・二二頁〈C〉のキーワード「営業所」の意見をご参照下さい。

右〈1〉は適用せず。〈2〉〈3〉は不当に適用の法令違背である。

〈4〉青色申告更正通知書に附記なしの違法→適用せずの違背

右は〈1〉〈2〉租税法律主義及び租税の目的違反と同趣旨である。

お互に関連の深い法令違反として所得税法一五五条関連としての〈4〉がある。青色申告者上告人両名にとって昭和六一~六三年間該当分全部に右附記なしの違法が発見された。それもその違法性は次に列挙する。

附属書類サ甲第七八号証の全部に該当する(附三頁)

〈5〉信用取引の売買回数の数え方 証取法二一条関連間違適用(附四頁)

例えば東芝一万株現物買全一万株信用買を同時発注した場合、被上告人は信用取引は経済条件が違うからと云って二回と数えているが正しくは同じウリなので一回と数うべきである。この様に売買回数の数え方の物指し基本的間違いを犯している。従って次の〈6〉共に被上告人例の売買回数は基本的に間違ってあり実際より多くなっている。これは信用取引の「現引」「現渡」についてもノーアカウントにすべきを回数を追加すると云う間違いを犯している。これは信用取引の知識の欠如

仕組帳票の見方がわからないことに基因する。この間違いに当方の指摘によってやっと気付いて大幅修正をしたものに〈9〉自白顕著な事実がある。

〈6〉株式注文伝票(証取法一三〇条〈1〉)売買報告書(証取法四八条)(附五頁)

株式売買回数の計算に当って前者の執行条件欄(無条件・出合・寄付大引)

を無視して後者の枚数で計算すると同じ方法をとっている。注文訂正分も同じ。両者の違いがわかっていない法令の間違い適用である。

〈5〉〈6〉を合せ考えると被上告人側及び判決理由には売買回数の基本的間違いがあり、今となっては個別に検証出来ないが、全般数字は信用出来ない。

〈7〉株式売買回数に関する最も注目すべき判例(附六~八頁)

サ甲第八一号証 一寸古いが他の判例と比し光っている。

大和証券と上告人両名の売買委託契約について、実情に合った解釈をされている

例えば、注文訂正分及び東芝一万株売って東電二〇〇〇株買いと云った「乘換」についてウリカイ同時に行っても一回とする等、これによると更に売買回数が減る。この乘換は上告人は多用した。

〈8〉所得税法二七条〈2〉必要経費について、上告人両名分に法令適用せずの違反があり

附属書類 サ甲第八二号証(附九頁)

国税庁(九頁)の有権的解設にも反する違法が行われたことになる。

そこには中程の(注)で「株式等の譲渡に係る必要経費は、借入金利子、売買手数料、管理費その他株式等に係る所得を生ずべき業務について生じた費用をいいます」と明示してある。

〈9〉民訴法二五七条規定の自白顕著な事実に関し 法令適用せずの違法あり

附属書類サ甲第八三号証(附一〇頁・附一二頁)

(九頁)

前述〈5〉でも指摘した通り信用取引の現引現渡しに関し費上告人側は一度計算相違を犯した一部修正に応じたが尚明らかに間違い部分が残っていることが間接的に判明したその件について二審において

不公平な扱いとして主張したが問題にされず、判決理由にも明らかにされずじまいになった。

〈10〉民訴法一二七条釈明義務 民訴法三一四条 文書提出命令何れも不適用の違法

(附一二頁) (附一四頁)

附属書類サ甲第八四号証参照 (附一〇頁)

(一〇頁)

〈11〉審理不尽(最高裁判例常用語)という上告理由 (附一三頁)

(一三頁)

附属書類サ甲第八五号証参照尚次の〈12〉参照

本件

〈12〉弁論調書の概要 (附一五頁~二一頁)

附属書類サ甲第八六号証

検証

〈13〉最高裁判所 法服の向こうで毎日新聞社会部 (附一七~一八頁)

附属書類サ甲第八七号証

(一六・一七頁)

2.右のうち法令が訴訟手続に関するものについて違背事実を具体的に掲記いたします。

〈5〉信用取引の売買回数の数え方 訴訟手続証拠に関し 証取法二一条間違適用前七頁参照(附四頁)

〈6〉株式注文伝票(証取法一三〇条Ⅱ)執行条件欄 不適用等 訴訟手続証拠関連) 前八頁参照 (附五頁)

〈8〉所得税法二七条〈2〉必要経費について

附属書類サ甲第八二号証にわかり易く条文付で解設されているのに不適用になった。訴訟手続証拠違反

(附九頁)

〈9〉民訴法二五七条自白顕著な事実、訴訟手続証拠違反、前述九頁参照 (附一二頁)

〈10〉民訴法一二七条釈明義務 民訴法三一四条 文書提出命令 (附一四頁)

何れも訴訟手続口頭弁論についての不適用の違法あり、

前述九頁〈9〉とも関連があるが、被上告人が上告人俊の昭和六一年~六三年の課税所得について間接的にも大幅な間違い計算をしている事実をつかんだのでダメ押しの証拠をつかむために一審では乞釈明の形で二審では文書提出命令で被上告人の所有する内部文書の提出を求めたが、応じられずそれきり二審判決を迎えた。これは自白と同じ自己に不利となる顕著な事実である筈である。しかし全くその結果が判決や理由に出ないとは全く不可解である。

〈11〉審理不尽(二九頁三〇頁に審理不尽の事実関係の補足説明あり)

次の三の《14》参照(一七頁) (附一三頁)

三、規則四七条民訴法三九五条(絶対的上告理由)関係分

次の通りその条項及びこれに該当する事実を具体的に示します。

民訴法三九五条の六 判決の理由不備、理由齟齬に関するものを数例示します。

甲第五八号

《14》上告人俊の借用名義取引否定に関する有力証拠方法甲第七二号証を提出し(附一五頁・二〇頁・二一頁)

強調したが殆ど審理もされず無視されて判決理由にも全く述べられていない。昨年秋広島で親友の森川憲明弁護士(元高松高裁長官)に会って本件について相談したところ、唯一この部分が説明不足だと指摘されたところであり、二審判決に影響したと思われる。その後それを補う新しい強力な上記証拠を住友銀行池袋支店の協力で作成提出したが無視された。従って民訴法三八四条Ⅱ、三九六条、三九四条によりこの部分を欠いた上記判決は理由不備違法であり上訴上告理由となるものである。附属書類一五頁、二〇頁、二一頁参照、五八号が認められその取引明細書七二号が不知になるのはおかしい。両方が揃って有力証拠方法となるものです。

《15》前述〈9〉民訴法二五七条自白顕著な事実に関する部分について(附一〇頁・附一二頁)

この点については、上告人両名は重要な争点として具体的事実をあげ強調したので判決では全体として理由を認め、判決理由に結果を出すべきであったのに何もなされず欠けていた。これは民訴法一九一条ⅠⅢ違反である。

具体的事実とは被上告人が株式売買に関する〈5〉〈6〉の正確な知識を欠いたため上告人両名の大和証券長男の和光証券の帳票を勝手に点検し、貸借反対計算とか回数ダブルアカウントを行い課税所得金額 売買回数等本件の争点に当る部分に大きな計算相違をし上告人側の指摘に基づいて大幅訂正を行った(自白に相当する)しかし訂正不十分で尚未訂正分の誤りがあることを度々上告人側が主張したが、頑なに拒んでいる。

特に上告人俊分の課税所得金額は、更正通知書段階と最終先方の計算で数百万円の計算相違があり東京国税不服審判所の試算とも二百万近くの差がある被上告人側は一審裁判長から違う理由を釈明する様最終段階で命ぜられたが、ごまして応じていない。

二審においてはこの部分について民訴法三一四条 文書提出命令〈10〉をお願いして明らかにしようとしたが、こんどは高裁側に無視された。先日アトランタオリンピックで日本柔道は健斗した。そこでは一本勝とか技あり2本で1本勝と云ったハッキリしたルールがある。裁判では自白とか顕著な事実が発覚したらそれを不利に判断して然るべきを逆に有利にして勝訴にするとは全く不可解である。

このような重要事項につき上告人両名が強く主張しているのにろくに調べもしないで判決理由にも何ら表現されていない。これは理由を欠き又は理由が矛盾しているもので理由齟齬として絶対的上告理由とされるべきものである。

《16》前記〈A〉〈B〉〈C〉は重要な判決理由であるが、これについては矛盾があり理由齟齬となっていることは前述の通りであるが、念の為ここで再説明する。

〈A〉の「単なるメモ程度」〈B〉の「同一場所」〈C〉の「営業所」と「帳簿類」と云った二審判決に使用された「キーワード」と中心にその間違いを指摘致します。

〈A〉の株式注文伝票を「単なるメモ程度」と云った部分について、

〈6〉で説明した株式注文伝票は売買報告書でないので上告人両名のところには送られて来ないので、その実物を見たこともなかった。昭和六三年一〇月頃、新宿税務署特別調査官菊島が弘子担当の大和証券池袋支店三浦営業課長のところに調査に来て質問。それに対する回答は「弘子分はまとめ注文が主体であったことと株式注文伝票はメモ程度のものです」と云った内容であった。

そこで上告人両名はああそうか。株式注文伝票は見たこともないがメモ程度のものと認識した次第です。今回改めて売買報告書との違いを調べたところ執行条件欄がついていることがわかり、この正確な記入とチェックこそが売買回数の決めてになることが判明しました。ところが被上告人も裁判所もこの点に関しては全く無関心にこれを除くと株式注文伝票は売買回数に関する限り、間違いメモに転落するものである。

従って〈A〉の理由は間違いである。

〈B〉のキーワードは上告人両人が「同一場所」で売買を行っていたと云う点も間違いである。

俊は、大和証券新宿支店で、弘子は大和証券池袋支店で、各自独立で自分の名義の取引を自分のお金とリスク勘定で行っていたものでそれぞれ「別の場所」で売買を行っていたものである。但し大事な投資情報の交換は度々行い、資金的強力も年一回位行ったことはある。

〈C〉のキーワードは「営業所」と「帳簿類」である。

前者について、人的、物的設備、営業所が必要だ(昭和39・12・12福井地裁人絹清算取引事件では最高裁も特に人的、物的施設を必要とせずとしている。)とのお考えのようですが意味が良くわかりません。有価証券の売買は東京証券所会員である大和証券が行い上告両人は同社に委託して売買する仕組みになっています。資金と情報とやる気があれば出来ます。電話でFAXでもインターネットでも郵便でも注文出来ます。不特定多数を相手に売買するわけではないので人を集める場所も看板も不要です(商法に云う場屋取引ではないのです)上告人両名中心の同族会社ドクター(株)を昭和六三年九月設立定数に有価証券取引を掲げ個人営業時代と同じく内容的もに設備人も殆ど変らず個人営業の延長と同じです。(昭和六一~六三年)昭和35年10・31最高裁小法廷で人的物的施設がなくても事業所得とする旨判示している。

後者「帳簿類」については〈6〉で説明致しましたように大和証券から送られて来る売買報告書を俊分弘子分でそのまま綴込めば帳簿代りになります。

その脱漏を防ぐためと航海における海図羅針盤に相当する役目を持つ取引経過ノートを作成し保存しております。それには、管理料名義書替料等必要経費と収益概算と評価権益状況も記入しており一番実践的な帳簿であり現在もそれを利用しております。大和証券から月に一~二回まとめて照合表が郵送されて来るので照合済みの上は照合表の保管で帳簿に代用しました。

そうした事情も殆ど調査しない帳簿を作成した形跡もないとは事実誤認も甚だしい。

以上の様に〈A〉〈B〉〈C〉の二審判決追加の理由は何れも事実誤認甚しくしかもことさら針小棒大に強調されている様に思われます。一審判決理由は全般としてわかりにくい大きな木の土台の様に思われました。

それに二審判決理由として〈A〉〈B〉〈C〉をお示しになったことは、木に竹か金を接ぎ木する様な感じが致します。

理由不備、理由齟齬の甚しいものです。

この様に数々の事実誤認、しかも裁判に直接響く大事な点においてそれが認められたことは残念である。

それに加えて今回以上の様な法令違反、最高裁判例にも反する面も認められた以上、上告人両名は二審判決に全く納得行くはずがありません。全く不可解です。

四、規則四八条(判例の摘示)関係分

判決に法令の違背があるものについて、その判決が最高裁判所(大審院)の判例と相違する判断をしたと思われるものについて

その判例を具体的に示して主張致します。

1.《17》証拠理由の説示 前述一(三)〈A〉〈B〉〈C〉の通り (附一四頁)

最高裁 昭和26・3・29民集五-五-一七七

証拠の内容をいかなる理由により真実と認めるかを判決理由で判示することは〈A〉〈B〉〈C〉〈11〉部分の否定ととられる判断が示されている。

2.〈C〉福井の人絹清算取引について、昭和38・10・31最高裁小法廷で人的物的施設がなくても事業所得と判示(附八頁)

上告人両名の主張と一致し、二審判決理由と正反対である

3.《18》通常共同訴訟人独立の原則 前述一(三)〈3〉の通り (附二頁)

最高裁 昭和43・9・12第一小法廷 破産差戻し

〈A〉〈B〉について最高裁判断と異なる。

4.《19》証拠共通の原則 最高裁昭和28・6・14 民集七五五四 18と同じ

5.《20》青色申告の更正理由附記なし

昭和38・5・31最高裁判決で「理由の記載を欠く更正処分は無効となる」旨判示前述〈4〉の通り上告人両名側主張有利の判示をされた。

6.《21》審理不尽という上告理由判決 (附一三頁)

最高裁 昭和35・6・9 民集14-7 一三〇四頁 (二九・三〇頁説明)

審理不尽・理由不備の違法を認める。

上告人側〈11〉主張と同趣旨で被上告人側の違法は明らかである。

7.《22》釈明義務違反 (附二頁、一二頁)

最高裁 昭和44・6・24 民集23-七二五で違法性が認められた。

上告人側〈10〉の主張と同趣旨で被上告人側の違法性は明らかである。

五、附属書類の表示 ここでは目録のみとし、内容は別紙に記載します。

別紙 頁数

〈1〉 租税法律主義(憲法八四条)

「疑わしきは納税者のために」 サ甲第七六号証 P1.P11.

〈2〉 税務通達

弁論主義

〈3〉 共同訴訟人独立の原則(民訴法六一条) 〃 七七 〃 2

〈4〉 青色申告書更正通知書附記なし 〃 七八 〃 3

(所得税法一五五条)

〈5〉 信用取引 証取法二一条 〃 七九 〃 4

信用取引のご案内 第一証券 表示4枚

〈6〉 株式注文伝票 売買報告書 〃 八〇 〃 4~5

(証取法一三〇条〈1〉)(証取法四八条)

〈7〉 東京地裁判例株式売買回数判定基準 サ甲第八一号証 6~8

〈C〉福井人絹清算取引事件 昭和38年10月31日最高裁小法廷 サ甲第八九号証 8

〈8〉 必要経費(所得税質疑応答集) 〃 八二 〃 9

所得税法二七条〈2〉

税金百科→事業所得が雑所得かの区分は事業規模で行っているかどうかで決める。

〈9〉 自白顕著な事実(民訴法二五七条) 〃 八三 〃 10~12

〈10〉 釈明義務付文書提出命令 〃 八四 〃 10~11

(民訴法 一二七条)(民訴法三一四条) 12~14

〈11〉 審理不尽(最高裁判例常用語) 〃 八五 〃 10~13

〈12〉 弁論調書 〃 八六 〃 15~22

検証

〈13〉 最高裁判所法服の向こうで 毎日新聞社刊 〃 八七 〃 24~25

〈14〉 裁判を受ける権利 サ甲八八号証 26頁

附記(一)(二)(三)(四)(五)(六)(七)(八)

本件審理不尽の事実関係の補足説明

附一五頁〈12〉八六の本件弁論調書の概要の通り、平成七年五月一日控訴趣旨八月二一日控訴理由(準(三二)証八通)提出以来第一回公判九月二七日(準34証2)第二回公判十二月六日(準36証6通)第三四平成八年二月一四日準37証5、第四回五月一五日(準38証7通、準39証5通の四回うち三回分は延期になったので実質三回の公判が行われたことになる。

長い夏休みや冬休み、オーム裁判の合間を狙った概ね四シーズンに一回づつの割合で公判が行われたが、裁判所陪席裁判官から「わかりにくい」「符号が多くて見づらい」と云う御注意があったので上告人両名の提出書類は十分読まれなかった様に思える。

二審中に上告人は準備書面33→39の七通証拠方法甲43-甲75三四通出した。

そのうち結審日平成八年五月一五日に準備書面(38)(39)の二通証拠方法甲63-甲75一四通とまとめて提出した。被上告人側の書類提出状況が遅れ勝であったのでそれに合わせるため足踏して待っていた面もある。この準備書面二通と証拠方法は当日法廷で被上告人に渡されたものであるが、開廷と同時に被上告人に、一四通の証拠方法について否認を求めた被上告人は仕方なく全部不知と答え結審を言渡された。

書証目録の認否状況を見ると、総数三六件中不知二四件、うち結審は一四件認めたもの七件残り五件が半々であった。従って三六件中2/3が不知実質否認である。出所のハッキリした証拠ばかりで原本も保管している。新聞記事や被上告人側の提出した資料に基づいて作成したものも多数あった。これは極めて形式的で実質的な証拠調べとは言えないし読んでるふりして上告人提出の準備証面七通も読まれなかったと思う。

六 附記

事件の背景事情及び問題点

(一)本件税務署に対する異議申立(平成三年四月)から二審判決(平成八年六月)まで五年二ヶ月経過した。その間東京不服審判所への審査請求期間一年五ヶ月一審一年一一ヶ月、二審一年一ヶ月(裁判合計三年)と不服処分・違法処分に対する取消請求るフルコースを経験した。このうち一審・二審の三年間は全く骨折り損のくたびれ儲の結果となった。

これは、本件争点の株式売買、税金問題について、裁判所側の細かい点について専門知識が不十分で(不服審判所前置主義の影響と思う)不明な点は総て被上告人側に尋ね、それを正しいと信ずる姿勢に問題があった。しかし世界に冠たるマルサも本件発生時においては、この分野については盲だったのです。従って証券会社の帳票の見方もわからず課税所得の計算を大幅に間違え売買回数もその都度変ると云う失態を演ずることになった。

(二)この様に裁判所の判断がこの種分野についてはマルサ側べっりの不公平な結果を生んだこれは裁判が公開とは言え世間の関心が薄く公判を傍聴する人も殆どなく非公開と同じく、この影の部分が不公正のまま放置されているからである。刑事裁判等では新聞にも公開されることが多く光の当る部分であり裁判官も下手な判断は示せなくなる。先般日経(六月二九日)記事で「川崎市民が裁判官を裁判」がのっていたがそんなことにでもなれば変って来ると思う。

(三)本件の発端は八年前のソールオリンピック時に遡る。上告人両名に三人の子供の五人の出資で同族会社「ドクター株式会社」設立登記申請を法務局に出して日本を出発、ソウル観戦に出掛けたところ留守宅に新宿税務署菊島特別調査官から呼出し電話があった。帰国後同氏に話した上告人両人のメモは今も残っているが終始変っていない。又弘子の取引が大和証券池袋支店にあることは質問にはなかったが、弘子が自発的に申告したものである。後日菊島氏が大和証券池袋支店を訪れ弘子担当三浦課長に面会した。その時菊島氏の質問に対し、三浦課長は「弘子はマトメて株式売買注文を出していたこと。株式注文伝票については私はメモ程度のものと考えている」と答えた旨弘子に連絡してくれた。前記で問題となった「メモ程度のもの」と云う俊の見解はその時の印象によるもので独自の見解ではない。

又帰国後昭和六三年九月一四日ドクター(株)は登記が終り無事誕生した。

これは従前の家族間で協力し合って行っていた個人営業を引継ぐだけで、その内容は定款に示す通り殆ど変りはない。しかし法人と個人では株式評価損、必要経費では大変な差別扱いとしており個人営業不利な扱いをしている。これは憲法一四条〈1〉の「法の前の平等」の精神に反する取扱だと思う。

同じ様な差別扱いが本件争点となっている株式売買益が事業所得か雑所得か「事業か否か」についても発生している。

しかし、必要経費附の9頁中程(1)株式等に係る事業所得又は雑所得の金額(一)株式等に係る譲渡所得の金額と分類(所得税法27条〈2〉35条〈2〉、37条〈1〉)する等両者の区別を廃止している点を注目して下さい。元々不合理な税務通達の解釈により両者に差別をつけるのは不可解であり、憲法八四条規定の租税法律主義にも反する。もう一つの焦点となった株式販売回数についても上告人両名の主張した内容が正当で被上告人側の不合理な主張は平成元年四月一日現場で適用不可能として廃止になった。

(四)上告人両名の健康状況と人権問題

附24頁に示す通り上告人両名はこの八年間で一段の老化と病弱化が進み夫々東京都認定の身体障害になった。俊は心臓病で弘子は腰痛で夫々一級、四級認定両名の本件訴訟結果により財政上資金繰圧迫が加重されて来た。

俊は本税納付済にもかかわらず確定申告の還付金最近三年分計一五〇万円が差押えられ、新宿区及び藤沢市から合計約一五〇〇万の差押予告が来ている。

弘子も豊島区区役所から所有不動産の差押を受けたことがある。

上告人両名は二審判決で今流行の0-一五七菌に当てられた以上のダメージを受けた。かかる状況では両人の医療費にも事欠き、むつかしい上告のための弁護士費用も捻出出来ない。両面で本件上告理由書も書いた次第です。右は憲法一三条個人生命尊重生存権違反ではないか。二審で右事情を訴えたが何等判決理由に反映れさていない。

(五)上告人俊弘子の株式投資

俊は最高裁誕生の昭和二二年の京大法学部に入学した最初の講議は民法債権担当の末川博先生であった。先生はイエーソングの権利のための斗争を好んで引用され、又これからの金持は物物でなく紙持ちだと云われた。東大から講演に来られた附23頁の我妻栄先生は、法律における理屈と人情を説から民法における物権から債権へを説かれた。俊はこの影響もあり株式投資に興味を持ち銀行に就職して六年間責任者としてその方面の仕事をした。資本主義社会の中核は株式会社であり株式市場によって機能されている。ところが日本においてはこの市場機能に対する重要性についての認識に欠け、株をやっている人は博徒の様に恐れられたり貶まれる傾向がある。本件二年目の昭和六二年にNTT株式上場があり百五〇万人の個人株主が誕生した。しかし、これにより国は十兆円の荒稼ぎをしたかわりに上告人両面を含む百五〇万人の個人株主は泣いた。更にその年の一〇月にはブラックマンデーがあり株が暴落上告人両名も胆を冷やした。

(六)(一)の事情もあってエリート官僚である裁判官や被上告人諸公にとって株をやることは御法度で前述〈5〉〈6〉〈7〉に関してもその実態が良くわからず御理解も不十分と感じました。それが上告人両名の常識経験則との間に大きなギャップを生じている。それが訴訟手続証拠段階の〈4〉〈5〉〈6〉〈7〉〈8〉〈9〉前述によく現れている。

(七)日本の官僚 優秀でエリートと云われているが、国民から直接選ばれた者でもなく俸給は国民の税金から支払われており、国民の公僕であるべきであるが国民の上に君臨している。

立法司法行政の三権を裏で操り政策国策法律通達をつくって国民を事実上支配している。各省庁に属し、そのムラの利益を最優先に考え次は国家・国民は最下位に位置する。

長谷川慶太郎先生曰く「官僚とかけてヒラメと解く。その心は目が頭のテッペンについている」

(八)裁判所に働く官僚達、朝日新聞社刊「孤高の王国裁判所」 毎日新聞社刊「検証最高裁判所」附24頁、25頁に詳細に書かれている。

閉鎖的社会に住んでオーム信者の様にマインドコントロールを受け易いヒラメ的性格を持っている様に見える、最近ファクシミリを利用したり「結審簿」を備え付け裁判のスピード化に取組んでいる結構な改革だと思うが、本件二審判決の様な行過ぎは禁物である。

七 「おわりに」

(一)「はじめに」裁判のわかりにくさについて指摘しましたが、もっとわかりにくいのが税法です。そして度々変更改廃が行われ増々わかりにくくしています。それを統一解釈しようとするのが税務通達のようですが、これも増えるばかりで難解です。本件の主要な争点となった更正通知書に附記なし。事業所得か雑所得か。必要経費か否か。等々に関するものについて、この通達が顔を出して来ますが、何れも不透明なそして不合理なものばかりでした。その後廃止になったり改正になったりしています。本件適用時に既に改廃さるべき欠陥を閉包していたからです。又株式売買回数に関する判例も当方で調査した限りにおいて、前述〈7〉附6~8頁を除いて株式市場の現場を理解しない偏見に満ちていた。

(二)ところで、これまで上告理由で指摘した数々の法令・判例・手続違背は確かである。又その見直し過程で浮上してきた審理不尽事実誤認の違法事実も多数にのぼる。その主因は前述附記の事情によると見た。

(三)二審裁判の審理不尽の内容は前述二九・三〇頁及び附一五~二二頁の通り。

その内容は上告人両名が憲法三二条で保障されている公正で実効的な裁判を受ける権利を実質的に侵害されたも同然のヒドイものでした。長い夏休み、冬休み、オーム裁判を理由にだらだら審理が行われ、これでは三年位かかるなと思っていた矢先に不意討ち的に突然結審が言い渡され、その三二日後に判決が出た。

この不自然なスピード裁判の陰でショッキングな疑惑が生まれて来た。それは附24~25頁の記事と24頁の判決言渡期日の指定日から推定すると上告人両名は高裁の六月売上増進日間の獲物にされたのではないか。短期間でワープロ判決を出すには一審判決を土台にしたカンニング的結果しか出せないと云う疑惑である。これでは「はじめに」述べられた「裁判官は誰のために何のために存在するのだろうか」(五頁)成程わからない。最後に附二六頁の戸波江二早大教授「裁判を受ける権利」論文の最後に次記を加えて結びにしたい。「一・二審における税金訴訟では裁判所は税務署側(国)ベッタリの判断が優先する。初心に帰って国民のための裁判所裁判であってほしい。」

なお、本書は最高裁判所に宛てた上告人両名の必死の訴えであるがその気持ちの名宛人は他にもあります。それは在天の恩師中田淳一先生に捧げる卒論であり三人の子供(信之・重光・真理子)及び親友森川憲明弁護士(元高松高裁長官)宛の遺書であり、観世音さんに奉る願書でもある

中田先生は昭和七年司法試験トップの秀才で京大教授訴訟法学令会長もなされた大家である。還暦のお祝をして数年後病気で逝去された。

昭和二四年四月から一年眠素いや失礼民訴の中田ゼミの一員として御指導を受けたが原書の輪読で卒論の提出を免れた。そこで長年京大に忘れ物をして来たような感じがして来たそこで今回本書を卒論として捧げる。

前述のとおり上告人両名は共に身障者で共に右脚がハレて歩行に支障を来している。

弘子は現在も入院中で看病しながら共同で本書を作成した。

二審不当判決で両名は今流行の0-一五七以上のダメージを受けた。文字通り八方塞がりで人世最後の峻険にさしかかっている。この峻険をお互いに相憐み扶け合ってまるで壺坂霊険記の沢市お里のように乘越に必死である。

上告人は谷底へ身を投ずる前の遺書のつもりと観世音様の特別のご利益を祈る願書のつもりで本書を書いた。

以上

(附属書類省略)

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